伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

酷評が自己防衛だったとは限らない

『ヌレエフ』P.52:
妨害する人びとを辛辣に酷評し、
Meyer-Stabley原本:
Il jurait et avait des commentaires cinglants qui contrariaient les gens autour de lui.
Telperion訳:
彼は悪態をつき、手厳しい論評で周りの人をむっとさせていました。

ワガノワ時代のヌレエフを語るガブリエラ・コムレワ。

直訳は「彼は悪態をつき、周りの人々を不快にさせる手厳しい論評を持っていました」。関係節"qui contrariaient les gens autour de lui"(周りの人々を不快にさせる)は、"des commentaires cinglants"(手厳しい論評)についての説明。述語の動詞contrarierには「~を邪魔する」という意味もあるが、人々(les gens)は邪魔される側であり、邪魔する側ではない。

ちなみに、関係詞がquiでなくqueだと、論評と人々の関係が逆になり、「周りの人々が邪魔する(不快にさせる)手厳しい論評」となる。しかし、これでは人々が論評を邪魔することになるので、意味をなさない。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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