伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

新入生がキーロフに出演?

『ヌレエフ』P.47:
キーロフの“タラスブルバ”の舞台に出演したのだ。
Meyer-Stabley原本:
aller assister au Kirov au ballet Tarass Boulba,
Telperion訳:
キーロフにバレエ「タラス・ブルバ」を見に行ったのだ。

ワガノワに入学して間もないヌレエフがやった規則違反。

"assister à ~"は「~に出席する、~を見物する」で、自分は参加しないで外から眺めている状態を指す。

新倉真由美の文の不自然な点

  1. ワガノワの生徒の夜間外出が禁じられているのは、卒業生が多いキーロフ・バレエではよく知られているだろう。なのに一介の新入生がキーロフから出演を許可されるのは、ありえないと思う。
  2. しかもヌレエフは同年代の生徒たちよりはるかに出遅れており、このときまだ恩師プーシキンに出会ってすらいない。たとえコールドとしてでも、キーロフの舞台に立てるレベルではなかっただろう。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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