伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

パリ・オペラ座との関係は監督辞任直後は冷え気味

『ヌレエフ』P.294:
パリ・オペラ座バレエ団との摩擦はこれ以降徐々に緩和していった。ガルニエ宮にはパトリック・デュポンが戻り、前監督への報復や辛辣な批判もなくそのポストを引き継いだ。
Meyer-Stabley原本:
Le divorce avec l'Opéra de Paris est désormais consommé. Au Palais Garnier, Patrick Dupond revient et lui succède à la direction artistique, sans esprit de revanche, mais non sans acidité :
Telperion訳:
パリ・オペラ座との決裂はこれ以後遂行された。ガルニエ宮にはパトリック・デュポンが戻り、芸術監督の座を引き継いだ。復讐心はないが、辛辣さがないわけではない。

ヌレエフがパリ・オペラ座バレエの監督として契約を延長しないことが決まった後。

  1. consommerの意味は「消費する」「飲み食いする」「成し遂げる」などで、「緩和する」という意味は見当たらない。ちなみに、「和らげる、鎮める」に当たるフランス語はconsoler。
  2. "non sans acidité"は二重否定の表現であり、「辛辣さがないわけではない」。前の「復讐心がない」(sans esprit de revanche)と反する内容であることは、間にmais(しかし)が挟まっていることからもうかがえる。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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