伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

タイトルをつけるマスコミの心境

『ヌレエフ』P.169-170:
ジャーナリストたちはタイトルをつけるのに苦心した。“悪魔のような…凄まじい…気まぐれな…粗野な…無礼な…かっとなりやすい…”」
Meyer-Stabley原本:
La presse a beau jeu de titrer : « Infernal... Capricieux... Grossier... Insolent... Coléreux... »
Telperion訳:
マスコミは見出しを付けるのに有利な立場に立った。「凄まじい…気まぐれな…無作法な…横柄な…怒りっぽい…」

ヌレエフが次々に起こす騒動をマスコミが報道する様子。新倉真由美の文では当時の記事の引用に見えるが、本当はMeyer-Stableyによる描写

「苦心する」でなく「有利になる」

"avoir beau jeu de ~(不定詞)"は「~するのに有利な立場にある」というイディオム。ヌレエフが起こす騒動がマスコミの需要にかなっていたことを、Meyer-Stableyはマリア・カラスを引き合いに出してにおわせているが、ここでもマスコミの喜々とした様子が想像できる書き方をしている。

形容詞の数が1つ増える

見出しの例である形容詞は、原文では5つ、訳本では6つ。多分最初のInfernalを「悪魔のような」「凄まじい」と二重に訳している。間違いというほどのことでもないが、この部分は別人の文にされたり、イタリアのトリエステが人名にされたり、新倉真由美が原文を飛ばし読みしている感じが強いので、あえて取り上げる。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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