伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

問題なのは今作成中の契約

『ヌレエフ』P.291:
三年前マリオ・ボアが作成した契約書はいくつか明確にしたい点があります。信頼こそ重要なのです」
Meyer-Stabley原本:
Il y a trois mois, Mario Bois, mon homme d'affaires, m'a fait parvenir un projet de contrat que j'ai signé. Mais il y a certaines choses que je veux mettre au clair, et c'est là où la confiance qu'on me témoigne devient importante. »
Telperion訳:
3か月前、私の実務を担当するマリオ・ボワから、私が署名した契約の文案が届きました。しかしいくつか明確にしたい点があり、そこで私に示された信頼が重要になるのです」

1989年の芸術監督契約更新を巡る交渉についてのヌレエフの発言。

この部分で目立つのは、"trois mois"(3か月)が「三年」になったことのみ。翻訳ミスか誤植かも定かではない。しかし、現在の交渉の叩き台となる契約が3年前に作られたというのはいかにも不自然なので、訂正だけしておく。

それ以外の点には記事を書きたくなるほど大きな違いは感じないが、新倉訳が原文に正確に対応していないのは確か。せっかくの機会なので、フランス語の試験で減点されない形で文全体を訳した。唯一ひっかかるとしたら、"m'a fait parvenir un projet"を直訳「文案を私に届かせた」でなく「文案が届いた」としたことだろうか。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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