伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

「驚く」でも「驚かせる」でもないサプライズ

『ヌレエフ』P.247:
彼女はそのダンサーの秘密に驚嘆した。
Meyer-Stabley原本:
Elle a surpris là le secret du danseur :
Telperion訳:
彼女はそこにダンサーの秘密を思いがけず発見した。

スタジオで練習する自分を見るヌレエフの冷淡な眼差しに強い印象を受けたフランソワーズ・サガン。

原文の述語の動詞surprendreは英語のsurpriseに似ており、最も一般的な意味は「驚かす」。受動態で「驚く」という意味になることが多い。ところが上記の述語"a surpris"は能動態なので、「驚く」にならない。かといって、「彼女はダンサーの秘密を驚かせた」では意味をなさない。

仏和辞書でsurprendreを引くと、「驚かせる」以外にもいくつか意味がある。そのうち、「彼女はダンサーの秘密を???した」という文に最もよく当てはまるのは、「はからずも発見する、出くわす」。

「彼女はダンサーの秘密に驚いた」と書くには、surprendreを受動態で使わなければならず、動作主を示す前置詞deが「ダンサーの秘密」の前に必要。つまり"Elle a été surprise du secret du danseur."となる。

2014/2/25
英語のsurpriseへの言及

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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