伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

plus belleは「より美しい」、ではde plus belleは?

『ヌレエフ』P.141:
拍手喝采が彼女をより一層美しくしていました。
Meyer-Stabley原本:
Les acclamations reprirent de plus belle.
Telperion訳:
ひときわ高まった喝采がまた始まりました。

1962年2月21日、フォンテーンとヌレエフが「ジゼル」で初共演を果たした後、いつまでも続くカーテンコールの情景。

"de plus belle"は「いっそう激しく、前よりひどく」というイディオム。仏和辞書でbeauを引くと載っている。新倉真由美による「彼女をより一層美しくして」は、次のことからの類推ではないかと思う。

  • 形容詞beauの最もメジャーな意味は「美しい」。
  • belleはbeauの女性形。
  • plusが形容詞の前に付くと、形容詞の比較級「もっと~」になる。

述語で使われている動詞reprendreは目的語がないので、ここでは自動詞として使われている。自動詞としてのreprendreの意味はそう多くなく、そのなかでは「再開する」が最も文脈に合う。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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