伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

ベジャールはヌレエフに打診しなかったのか

『ヌレエフ』P.260:
彼にとり二人のエトワール指名は寝耳に水だった。

ヴュ=アンとルグリのエトワール任命をめぐるヌレエフとベジャールの紛争の記述より。ところが、この文に相当する原文は、訳本に相当する場所にもその近くにも見当たらない。同じ段落に「エトワール任命を事前にヌレエフに打診したというのがベジャールの主張」と書かれているが、訳本でのみ、ベジャールの主張を嘘と断じていることになる。

訳本『ヌレエフ』での加筆は他にもあるにはある。しかしその多くは、章の中の小見出しや、「persona non grata」(P.75)や「オフショア」(P.192)といった語句の解説など、読みやすくするための試みと思われる(Meyer-Stableyによる段落区切りを無視して小見出しを挿入するのには賛成しないが、それはまた別の話)。『ヌレエフとの密なる時』からの引用が多くなった例はあるが、このために訳本の内容が変わったわけではない。今回の加筆はそれらと違い、補足説明の域を大きく越えている。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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