伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

初めて話す相手にどこまで話せるか

『ヌレエフ』P.131:
即決すべきだろうか?
Meyer-Stabley原本:
Est-ce qu'il veut venir en discuter sur place ?
Telperion訳:
そのことについてその場で話し合うことになるのを自分は望んでいるだろうか?

フォンテーンに初めて接触され、ガラへ招待されたヌレエフの心中。

仏文和訳の解説

  • "en discuter"は「それについて議論する」。「決める」と解釈するのは苦しい。
  • "veut venir ~(不定詞)"は「~することになるのを望む」。「すべき」と解釈するのは苦しい。

どういう文脈か

この引用文のある個所では、ヌレエフが抱くさまざまな懸念が述べられる。

そういう文脈なので、ヌレエフが初めて会話するフォンテーンに内心の不安を打ち明けることをためらっているのだと推測できる。

ちなみに新倉真由美は直前の文を「慈善公演は金にはならなくても賛辞を浴びる」というポジティブな内容に訳しているので、その後にこれまた承諾に積極的な「即決すべきだろうか?」が続いても違和感はない。

2014/2/16
仏文和訳の説明を簡略化

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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