伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

キーロフでの振付変更

『ヌレエフ』P.75:
誰一人彼に物申す人はいませんでした。
Meyer-Stabley原本:
Jamais personne avant lui n'avait osé ça.
Telperion訳:
彼の前にこれをやってのけた人は誰もいません。

ヌレエフがキーロフにいたころ、「ジゼル」の振付を変えたことについてのイリーナ・コルパコワの論評。前置詞avantは「~より前に、より先に」。動詞oserは「思い切って行う」。oserを「物申す」と解釈するのも、"avant lui"を「彼に向かって」と解釈するのも、仏和辞書を読む限りでは無理そう。

「ヌレエフの前に思い切ってやった人がいない」とはつまり、「そんなあつかましいことをしたのはヌレエフが初めて」ということ。原文の時制が直説法大過去なのは、ヌレエフが振付を変えた時より前のことを語っているから。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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