伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

ソ連の指導者とソ連の第一人者は違う

『ヌレエフ』P.73:
フルシチョフの妻ニーナ・ペトローヴァはクラシックバレエの愛好家で批評家としてもソヴィエトで第一人者であった。
Meyer-Stabley原本:
La femme de Khrouchtchev, Nina Petrovna, est une passionnée de ballet et le leader soviétique lui-même apprécie la danse classique.
Telperion訳:
フルシチョフ夫人ニーナ・ペトローヴナはバレエの熱烈なファンであり、ソ連の指導者自身が古典バレエを評価していた。

最初の文の主語がニーナ・ペトローヴナ、述語がest(~である)なのは明らかだが、途中のapprécieは動詞apprécier(~を評価する)の直説法現在三人称単数形なので、これも述語。この述語に対する主語は、直前にある"le leader soviétique"(ソ連の指導者)。つまり、この引用部分では2つの文が接続詞et(そして)でつながれている。

ソ連の指導者とは、ソ連の最高権力者を指す言葉なので、この場合はもちろんフルシチョフ。夫婦そろってバレエ好きということ。

2012/11/18
記事「フォンテーンのあおりを食らったのはパートナー」の原文で1つの文に述語の動詞が2つあることを踏まえ、当初あった「述語が2つあるのだから、文も2つある」という記述を消して若干書き直し。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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