伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

プティがベジャールへの加担を振り返るのはずっと後

『ヌレエフ』P.261:
とげのある言葉と不平不満の応酬から数年後、ローラン・プティは“ヌレエフとの密なる時”の中で告白している。
Meyer-Stabley原本:
Bien des années après ces coups de bec et de griffe, Roland Petit avouera dans Temps liés avec Noureev :
Telperion訳:
こうした辛辣な言葉が交わされてから多くの年月が過ぎた後、ローラン・プティは『ヌレエフとの密なる時』で告白する。

ヌレエフとベジャールがエリック・ヴュ=アンとマニュエル・ルグリのエトワール任命を巡って争ったとき、ベジャールの側に立って参戦したことを自著で回想するプティ。

国語辞書で「数(すう)」を引いてみた。

『新明解国語辞典第五版』より
三、四の。五、六の。
『デジタル大辞泉』より
数をかぞえる語の上に付いて、2、3か5、6ぐらいの数量を漠然と表す。

「数年」もそのくらいのイメージが普通だろう。原本には"bien des années"(多くの年)とあるのだから、「数年」と訳すのは実情に合わない危険が大きすぎる。そして実際に実情に合っていない。

  • 件の騒ぎは1986年。
  • 『ヌレエフとの密なる時』の原書が出版されたのが1998年。

12年を数年と呼ぶことはほとんどないと思う。

更新履歴

2014/9/26
国語辞書から引用

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Telperion

Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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